薔薇からリップサービス~フラワーネットワーク⑥

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お見舞いの帰り。『s'』に戻って冷蔵庫を開け、並んで手酌を傾けた。
「今度は女の子か」
「良いんじゃない、種(はじめ)ちゃん。二人らしくて」
「全然良さそうに聞こえませんよ、店長」
「美咲君も、ピッチ早いわよ。失恋の自棄酒みたい」
「失恋は店長でしょう?秋月夫妻、自分でくっ付けたくせに」
「美咲君こそ、恰好つけて花持たせて。オンシジューム、給料から天引き」
『s'』が先代の頃から10年越しの付き合い。弱みも傷も過ぎる程知っている。
「2回目の失恋に乾杯。今度はなぜ告白しなかったの、美咲もみじ君?」
瓶が空になった。もう一本栓を抜く。
「私、9号」
「服のサイズですか」
「3度目の正直」
「大人をからかうのはやめなさい、うららちゃん」
「4歳しか違わないじゃない、もみじ君」
「だから、ふざ    」


駆け足のヒールに取り残された部屋。
舌の上のビールと口紅の味が、いつまでも引かなかった。
青春
公開:18/10/29 00:09
更新:19/03/03 18:43
フラワーネットワーク 最終回まで残り2

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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