夢のような会社

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僕の会社は従業員の見た夢をVRデータ化して販売している会社である。出社した後は寝ているだけでいいのでまさに夢のような職場だ。ある朝、僕がニュースを見ているとそこに会社の名前があった。「業務停止命令」の文字。VRデータを本来販売してはいけない未成年に対して販売していたという。急いで会社に行くと、社内は従業員で溢れていた。
「社長はどこだ!」
誰かが叫び、僕たちは社長室の前に立った。ドアノブに手をかけながら、そういえば僕は社長の顔を見たことがないことに気が付いた。ドアを開ける。机の向こうに大柄な背広の後ろ姿が見えた。
「社長……?」
そう呼びかけると"社長"はくるりとこちらを振り向いた。その姿は人間ではなかった。鼻がアリクイのように長く、黒く短い耳を持つそれは「ゲェップ」と大きなゲップをしてからスゥッと消えた。

社長室の椅子には主を失った背広だけが誰かに着られた形そのままで残っていた。
その他
公開:18/10/28 22:30

小狐裕介

作家としてショートショートや短いお話を書いています!

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光文社文庫「ショートショートの宝箱」に「ふしぎな駄菓子屋」収録。
幻冬舎「未来製作所」に「砂漠の機械工」他収録。

最近はYouTubeも頑張っています!

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