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朝、出社してタイムカードを機械に入れる。カードが吸い込まれ、すぐに吐き出された。
出勤-7:55
退勤-17:05
印字された時刻を確認して私は帰路につく。空はもう暗くなり始めていた。

三ヶ月前、私はこの会社に「給料を今の三倍出す」と誘われた。前の会社には恩も愛着もあったが、家計の事を考えると断る事は出来なかった。
仕事内容は極秘。出勤から退勤までの記憶は消されてしまう。本当に何も覚えていない。しかし給料は振り込まれる。妻も機嫌がいい。エンジニアの腕を見込まれたのは嬉しいが、私は何を作っているのだろう…。
タイムカードを打刻するためだけに出社する毎日。
夜、駅前の店でビールを飲んだ。旨くない。仕事をやり遂げた達成感も何もなかった。
翌朝、絶対に忘れないと決意してカードを入れた。
が、やはり一瞬で夕方になり、がっくりと膝をつく。
こんなのは仕事じゃない。

私は働きたい。
働きたいんだ…。
ファンタジー
公開:18/10/26 21:36
更新:18/10/31 22:00

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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