丘の上のぬる燗

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その浜では、潮の満ち引きをエネルギーに変換して使っている。満ち潮のエネルギーは海に近い地域に供給され、それより強力な引き潮のエネルギーは丘の方まで運ばれている。

その民宿は丘の上に建っていた。供給されるのは引き潮エネルギー。それを主に調理に使っている。
この引き潮エネルギーを酒の燗に使うと、酒の特徴が最大限に引き出され、一味も二味も違う呑み口になる。
しかし、満潮時には引き潮のエネルギーが弱まり、燗をつけるのに時間がかかる。しびれを切らした客から催促されることになる。
仕方なく亭主はぬる燗で出している。

「おい、待たされた挙句、ぬる燗かよ」客からクレームだ。
「申し訳ございません。満潮時にはなかなか燗がつかなくて」
「なんだい。自分の不手際を月のせいにするのかい?」
「引き潮エネルギーが最小限になってしまうんですよ」
「よしわかった、月まで届く棒を持ってこい。突いて遠くに追いやるから」
公開:18/10/26 21:00
更新:18/10/26 21:02
スクー 引き潮ぬる燗

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。
いつかちゃんと書きたいと思っているネタが3本ありますが、いまだ手付かずのまま。
まずはショートショートで修行します。

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