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それは、七月の二週目、日曜日のことだった。
休日出勤で早朝からいない両親の代わりにいつものように朝食の用意をしていると、今年で八歳になる弟の恵太が走りよってきた。
なにごとかと振り返った私へ、恵太は色紙で折ったあやめの花を差し出す。
「お姉ちゃん、これあげる」
「わ、ありがと。でも、突然どうしたの」
恵太はおとなしめな子ではあるけれど、今まで折り紙をもらったことはなかった。
「今日はね、お姉ちゃんの日なんだ」
「お姉ちゃんの日?」
「そう。ぼくがきめた」
尋ねる私ににっこりと笑って見せると、恵太は「ぼくがやる」とホットケーキ生地のボウルを混ぜ始めた。
「五月に母の日があったでしょ? で、六月は父の日。だから、七月はお姉ちゃんの日にきめたんだ。お姉ちゃんは、今日はお休みなんだよ」
そう言って恵太が焼いてくれた、表面が焦げて生焼けのホットケーキは、苦くて甘くて、ほんのちょっとしょっぱかった。
休日出勤で早朝からいない両親の代わりにいつものように朝食の用意をしていると、今年で八歳になる弟の恵太が走りよってきた。
なにごとかと振り返った私へ、恵太は色紙で折ったあやめの花を差し出す。
「お姉ちゃん、これあげる」
「わ、ありがと。でも、突然どうしたの」
恵太はおとなしめな子ではあるけれど、今まで折り紙をもらったことはなかった。
「今日はね、お姉ちゃんの日なんだ」
「お姉ちゃんの日?」
「そう。ぼくがきめた」
尋ねる私ににっこりと笑って見せると、恵太は「ぼくがやる」とホットケーキ生地のボウルを混ぜ始めた。
「五月に母の日があったでしょ? で、六月は父の日。だから、七月はお姉ちゃんの日にきめたんだ。お姉ちゃんは、今日はお休みなんだよ」
そう言って恵太が焼いてくれた、表面が焦げて生焼けのホットケーキは、苦くて甘くて、ほんのちょっとしょっぱかった。
その他
公開:18/10/27 22:00
更新:18/12/30 07:00
更新:18/12/30 07:00
高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。
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