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*本文より一部抜粋*
腕の中で彼は静かに寝息を立てていた。
美しい黒髪を避け、彼の大耳介神経を舌で探る。
ピクッと反応し、吐息が漏れた。
「髪は束ねて右に流せと言ったろ。」
彼は顔を傾け軽く微笑んだ。

赤いネオンと汗が混ざり合い彼の痩軀を照らし出し、肩のタトゥーと美しい肋骨が露わになった。

末端の神経が互いを探し絡み合う中、
夜風が静かにカーテンを揺らした。

*本文より一部抜粋*
水没した都市。別名A 5地区。剥き出しの鉄骨。錆と潮の香り。
軋むベランダで彼女は小さな植木に水やりをしていた。大きく育て優しく育てといつも語りかけている。
昼食時の幸福な匂い。
ベランダより「あ、ホットケーキの匂い!」と聞こえた。
カタカタと湯が沸く音と換気扇の振動。
ラジオから「A 5地区まもなく酸素供給を停止する」とニュースが流れている。
緩やかな鼓動と幸福感
海風が静かにカーテンを揺らした。
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公開:18/10/27 20:10

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