ブラックワゴン社

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その日。我が社は、N県天空山五合目、車道脇の展望広場に停社した。
空気と眺望が清々しく、オフィス業務は常より捗った。
終業18時。キャンプ支度を始める皆を、社長が呼び集めた。背後に若者を連れている。
「新入の峰君だ。今日から営業席に座る」
現営業の海野さんに視線が集まる前に、社長は続けた。
「降りるのは私だ。本日より運転席を白井に譲る。助手席は森田だ」
二人以外、驚き顔の社員を尻目に、「あいのり」と社長が笑った。
「職場も。家族も。地球もな。偶々乗り合わせて、各人の時に従い降りていく」
全員頷く。ブラックワゴン社の乗社式で必ず聞く社訓だった。
「今日が、私のその時なんだ」
拍手が溢れた。
満天の下、社長を囲んでの談笑は深夜に及んだ。

翌朝、前社長は七合目を目指し、笑顔で出立した。この地で民宿を開くそうだ。

「よし。今日は綺羅岬で仕事だ」
新社長がエンジンをかけ、本社は滑らかに発進した。
その他
公開:18/10/27 18:09
働きたい会社

rantan

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すこしでも灯れたら幸せです。
よろしくお願いいたします(*´ー`*)

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