僕たちだって、働いてる

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「お疲れ様です。今日も無事終わりましたね」
「疲れたわあ。久しぶりの出勤よ」
「だけど大活躍したじゃない」
「そうそう、役に立てて嬉しかったわ」
臨時パートのおばちゃん三人衆は一気にしゃべると、話の矛先を僕に向けた。
「あなたなんて毎日出勤でしょ」
「きっと大変よねえ」
「でも、僕たちのご主人は優しいから大事にしてくれます。慣れれば楽ですよ。それに比べて、隣の席のご主人なんてひどいもんです」
おばちゃんたちも急に暗い表情になった。
「常勤の人たちなんて、落書きまみれ傷まみれで泣いてたねえ」
「私たちと同じパートさんだって、目盛も角もボロボロで、格闘ごっこに駆り出されてぐったりしてたわ」
「ホントにお気の毒よ。自分だったらと思うとゾッとする」
「いい職場に巡り合えて良かったですね」
ここはランドセルの中。
一対の三角定規とコンパスのおばちゃん三人、そして筆箱の僕は、今の職場に感謝した。
その他
公開:18/10/25 15:02
更新:18/10/25 15:09

中江光太( 東日本と西日本の間 )

読んでくださりありがとうございます!

小さいときから本が好きで、
一年くらい前からちょくちょく小説を書いています。

主に推理小説を読みますが、
最近は別のジャンルもときどき読みます。

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