特別な一皿

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ここは番町皿屋敷
いつもの様に丑三つ時になるとあの声が聞こえてくる
お皿が一枚、お皿が二枚
そう、あの有名なお菊さんの霊だ
その声は実に身の毛もよだつ恐ろしいものだった。だが、町民たちは慣れたもので、皆、怖いもの見たさにその場所に毎夜やって来た
よっ、待ってました。お菊ちゃん。今、何枚目
そんなに焦らなくてもさっき始まったばかりよ。でも、すぐに仕事が終わるわ。あら、お兄さんは二枚目ね。お隣さんは三枚目。どう、仕事が終わったら一緒に飲みに行かない
いや、そんな気はさらさらないよ。こう見えても毎日がてんてこ舞いなんだ。女房がいるからね。目を皿の様にして帳簿とにらめっこしているよ
あら、そうなの、残念。それじゃ、再開するわね。あれっ、今、何枚目だったかしら
さっき、三枚目だって言っていたよ
ありがとう。お皿が四枚。今日はこれでおしまい
もう終わり
ええ、この住まいは狭いから眩暈がするの
ドンマイ
公開:18/10/25 04:58
更新:18/10/25 05:03

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