手編みマフラー

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彼はバイバイした後、絶対こっちを振り向かない。以前、その理由を聞いたけど「なんか恥ずかしいから」だって。ちょっと冷たくない?
今日はそんな彼に手編みマフラーをプレゼントした。別れ際、彼の首にそれを巻き付ける。
「どお? 手編みだよ」
「うん、あったかい。てか、この色……」
「情熱の赤、なんて」
「派手じゃね?」
「そお? 似合ってるよ」
「うん」
「大事にしてね」
「わかった」
普段からあまり感情を表に出さない彼は、やっぱり素っ気ない。
「じゃ、またね」
「おう」
私たちはいつも通りの言葉を交わし別れる。
彼がスタスタと歩いていく。背中が遠ざかる。やっぱり一度も振り向かない。太めの赤い毛糸がスルスルほどけていっている事にも気付いていない。
私は自身の小指に巻いていた毛糸を見つめる。
「バカ……」
私は一呼吸置くと、勢いよく毛糸を手繰り寄せた。
「ぐぇっ」という彼の呻き声が遠くで、聞こえた。
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公開:18/10/24 23:59
更新:18/10/25 00:01
むう宿題・恋愛編 9/10 手編み

壬生乃サル

まったり。

2022年…3本
2021年…12本
2020年…63本
2019年…219本
2018年…320本 (5/13~)

壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)

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