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下天の雲海には無数のガラス玉が浮かんでいた。その玉は太陽の欠片のように輝いていた。彼女はフワフワと漂うガラス玉の中から1つを選んで手に取った。その玉に呼ばれたような気がしたからだ。
玉の中には小さな蕾が入っていた。
ふうっと息を吹きかけると、蕾が微かに膨らんだ。
大きく息を吹きかけてガラス玉を割らないように。
慎重に。焦らずに。願いを込めて。
彼女は何度も息を吹きかけた。
やがて、大きく膨らんだ蕾が開くと、ガラス玉は粉々に砕け散り、金色の美しい花を咲かせた。
刹那、花柱に1人の少女の幻が見えた。少女が泣いたり笑ったりしながら夢を叶える光景が一瞬の中で浮かんで消えた。

夢花を咲かせる。

それが彼女に与えられた仕事だった。全ての花を咲かせる事は出来なかったが、人の幸せそうな顔を見るのは好きだった。

彼女は金色の花を眩しげに見つめた後、もう一度息を吹きかけた。
金色の花びらが天空に舞った。
ファンタジー
公開:18/10/24 18:49
更新:18/10/24 22:17
下天の1日は人間界で50年 ゆめまぼろしのごとくなり~

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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