凶花~エピローグ~

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ガチャリ。温室の鍵が開いた。

「これは」
僕は絶句した。悪魔のような花弁を広げた醜い花がいっぱいに咲いている。
「探していたのでしょう?」
その声に驚き振り向いた。
「催眠にかかったふりをしていたの?そうだよ、様々な忌まわしい花の伝説を追ってずっと探してた」
僕は管理人の顔を見た。
「幼馴染みはこいつに中身を吸われて、葡萄の皮みたいになってたよ。僕は花を処分して悪夢を断ち切りたい。何だってこんな花を…」
管理人は笑った。
「ねぇ、あなた。世界は綺麗で優しいだけの夢で出来ているんじゃないんです。悪い夢や醜い夢も必要なのです」

管理人はオーケストラの指揮者がやるように、スッと両手を上げた。温室の花が一斉に管理人の方を向く。
「あなたには覚めることない最高の忌まわしき物語を」


管理人が手を振り下ろすの同時に、獰猛な顔をした花たちが向かってきた。僕は悪い夢を見てる。これはタチが悪い物語だ─
その他
公開:18/10/25 18:45
10の忌まわしき物語

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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