盆脳屋

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「盆脳」と云う陶器でできた植木鉢がある。
下部にも穴が空いており、頭に装着して使用する。嵌めたあと軽石を敷き、土を盛り、水を与える。
すると、ニョキニョキと芽が生え、幹となり、装着者の煩悩の数だけ枝が分かれる。

今日は久しぶりに盆脳屋にやってきた。
「ありゃあ、お客さんは随分と枝が多いですね」
「じゃ、短めにお願いします」
パチン、パチン。
と、盆脳鋏で枝を剪ってゆくと、纏い付いていた煩悩の数々が浄化されるのを感じた。
「おや?」
店主が首を傾げた。
「どうしました?」
「いえね。どうも一本だけ剪れない枝がありまして」
やはりこの店でも無理か⋯⋯。
苦心惨憺して一本だけ伸びた枝を剪ろうとしてくれたが、結局その枝だけは剪る事ができなかった。
不思議がる店主に金を払い、私は店をあとにした。

おそらく私の職業が大きく影響しているのだろう。
私は、依頼を受けていた殺しの標的の元へ向かった──。
SF
公開:18/10/25 18:35
更新:19/04/04 15:19
塔京

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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