憧れの社長の椅子

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会社と言っても個人経営。社長は父の友人だ。仕事はキツイし、給料も決して高くない。仕事はほとんど清掃と整理整頓。臭いし、キツイし、おまけに暑い。働き始めた頃は1ヶ月で3kgも痩せた。腰痛と腱鞘炎に悩まされたっけ。
ここまで頑張ってこられたのは、社長の一言があったから。
「俺の代わりはお前しかいない」
そう言ってくれた時は、涙が出るほど嬉しかった。いつかは社長のあの椅子に座る。その事を夢見て、どんなに辛い仕事でも投げ出さずに頑張ることが出来た。

ある日、社長が入院した。
仕事に復帰するには早くて半年。

ついにこの日がやってきた!!

「頼んだぞ」
病院のベッドで横になっている社長から言質を取った。
そうさ。社長の代わりは俺しかいない。
「後の事は任せて下さい」

憧れの椅子に座り、開店を待つ。
木製の小さな椅子に薄い座布団。
座り心地は最高だ。

ここは銭湯の番台。
男の夢が詰まった場所。
その他
公開:18/10/25 15:36
更新:18/10/25 20:56
働きたい会社

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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