ポケットに浮雲~フラワーネットワーク②

6
5

今日は店長が休み。生花店『s'』(小さなスマイル=微笑の意味)は、終日一人の予定だ。
開店10分前、ドアを叩く音に目を上げると、金の綿毛。
「May I help you?(いらっしゃいませ)」
中学英語な挨拶に、空色の瞳がぱちくり。……発音変かな?
空色がじっと、前のバケツを注視する。
――彫りの深い顔がくしゃりと笑み、結ぶジェスチャー。完全に女性への贈り物。
「Excuse,」
言い掛けて思い直す。相手は外国人、向こうでは定番のはず。

15分後、完成したブーケに空色が輝く。指が花の上を滑り、一輪抜く。
「?」
反射的に受けた手を取られ、甲にキス!
「Merci, mademoiselle」

「……フランス人か」
鼻歌混じりの背中が、通りの角で栗毛美人とハグした。
プレゼントを、半笑いでエプロンのポケットへ。
ボール咲きの白菊が、秋空に浮かぶ雲みたいだ。
「もっと髪切ろうかな、俺」
その他
公開:18/10/23 09:15
更新:19/03/03 18:38
花屋あるある?(半分実話)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容