綺麗なバラにはトゲがない~フラワーネットワーク①

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……今日も美しい。
観葉植物の陰で、俺は鼻の下を伸ばしていた。
近年は男が花を買うのも普通の時代だ。ただ俺は、花自体には興味がない。
『s'』=微笑という意味らしい、路地裏の小さな店。
女性が二人、花に囲まれ働いている。ショートも捨て難いが、やはりロング。
そう。俺の趣味は花屋の店員鑑賞。彼女は今まで愛でた中でも極上だ。
「お探し物ですか?」
「ええ。花束をお任せで」
嫣然とキーパー(保冷庫)を見る彼女。一段高い花瓶に輝く、大輪の真紅。
「トゲのないバラです。香りも抜群ですよ」
迷わず注文し、会計を済ませる。受け取った芳しい花束を、すかさず逆転。
「美しい貴方に」
決まった!ここで颯爽と退場。こういう古典が案外効く。……ふっ。完璧だ。

「また悪徳商売ですか、店長」
「商売上手と言って」
解いた花束に香水をひと吹き、彼女は空っぽの花瓶にバラを戻した。
「最近は造花も香水も、本物そっくりね」
その他
公開:18/10/23 09:14
更新:19/03/03 18:35
※フィクションです!! 本当の花屋さんは絶対しません

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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