万田の男

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とある万田の地区に、木羽野という貧しい男がいた。
木羽野はろくに働きもせず、毎日浴びるようにきしめんばかりを食べていた。
そんなある日、木羽野は思い至った。
食べるばかりでなく、自分こそが真のきしめん職人となり、世界を制するべきではないのか、と。
最高のきしめんを作るには、各地を回ってきしめんを研究し、有名店の全てを倒して歩かねばなるまい。
思い立った木羽野は、「希望亭」という未来の店名をひっさげて、競馬場へと駆け込んだ。

真のきしめん職人になるには、まずは元手が必要になる。
今まできしめんを食べることに財産の全てをつぎ込んできた木羽野は、窓口で有り金全てを叩きつけると、最も高オッズの痩せ馬、ロシナンテムーンに全額を賭けた。
ゲートが開く音と同時、月明かりが差し込む。
そうだ。看板メニューは月見にしよう。
馬の足音を聞きながら、木羽野は空に浮かぶ月を捕まえようと、両手を空へ突き出した。
その他
公開:18/10/22 23:23
更新:18/10/22 23:28
スクー ドン・キホーテで買った月 ミゲル・デ・セルバンテス著 ドン・キホーテのパロディ

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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