パラダイスロストの骨

あの者さえ居なくなればと思いました。
罪の果実の毒に冒され、天の園を転げ堕ちればよいと。
あなたの一部をもぎ取った盗人を、甘く誑かし、永久に届かない暗がりへ追いやってしまえ。
そうすれば必ずや、欠けた月は蜜に満たされ、あなたの優しい仕草も眼差しも、わたくしの上ばかりに注がれるに違いないと。

ああ、浅はかなこの謀りを、貴き御方は、しかし何もかも御承知でした。
真紅の唇伝いに禁忌を呷ったあなたは、盗人と寄り添い、乾いた泥といばらの荒野を這い回る。
誘惑と虚言の咎に生身を奪われたわたくしは、二十四分の一の代用に埋め込まれ、あなたの鼓動の真上に棲みながら、今宵も塞げぬ耳を、胸腔にこだまする睦言へ欹（そばだ）て続ける。

ええ、決して赦されるはずがなかったのです。
あの果実に真っ先に牙を立て、叶いもせぬ焔に身を焦がしたのは、他ならぬわたくしなのです。