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用を足してトイレから出ると、ふわりと甘じょっぱい香りが鼻先を擽った。
今日の夕飯はすき焼きだ。食卓の真ん中には、すでにグツグツと煮たち始めた鍋が、でんと鎮座している。
香りに誘われるように俺が食卓テーブルへつくと、途端待ちくたびれたというように、向かいからふて腐れた声が掛けられた。
「もう! お父さん遅いから、マミお腹すいちゃったよ」
むくれた声に謝ろうとする右から「いただきます」の声が飛んできたと同時、鍋の中の全ての肉がさらわれる。
「ちょっとお兄ちゃん! ずるい」
「こんなん早いもの勝ちだろ」
「こらこら喧嘩しないの。ほら、貴方も食べて」
俺はよく染みた白菜を頬張りながら、団欒の声に耳を傾けていた。
『独り身の方も家族と鍋を囲めます!』
そんな売り文句で売られている家族鍋と、六畳一間の単身者アパートで向き合う。
俺は楽しげなオプション音声と一人で鍋を囲みながら、幸せだなぁと呟いた。
今日の夕飯はすき焼きだ。食卓の真ん中には、すでにグツグツと煮たち始めた鍋が、でんと鎮座している。
香りに誘われるように俺が食卓テーブルへつくと、途端待ちくたびれたというように、向かいからふて腐れた声が掛けられた。
「もう! お父さん遅いから、マミお腹すいちゃったよ」
むくれた声に謝ろうとする右から「いただきます」の声が飛んできたと同時、鍋の中の全ての肉がさらわれる。
「ちょっとお兄ちゃん! ずるい」
「こんなん早いもの勝ちだろ」
「こらこら喧嘩しないの。ほら、貴方も食べて」
俺はよく染みた白菜を頬張りながら、団欒の声に耳を傾けていた。
『独り身の方も家族と鍋を囲めます!』
そんな売り文句で売られている家族鍋と、六畳一間の単身者アパートで向き合う。
俺は楽しげなオプション音声と一人で鍋を囲みながら、幸せだなぁと呟いた。
その他
公開:18/10/24 00:20
更新:18/10/24 19:15
更新:18/10/24 19:15
高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。
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