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ぼくの黒犬は大きくて凶暴で節操なんてまるでない。子兎、雌鹿、猪豚、どんな相手だってその首に深く噛みついて仕留める。ぼくは純銀製のピカピカした犬笛を持っているけど、黒犬のやりたいようにやらせてやる。この痩せた土地じゃ獲物はそんなに多くないからね。ひどく雨の降る夜、黒犬の唸り声で目が覚めた。黒犬の身体はぐしょぐしょに濡れていた。真っ直ぐに森の方を向き、姿勢をできるだけ低くして唸っていた。赤く鋭い目線の先を追うと、カラフルでポップなイカレた鱗を纏った巨大な蛇が。背中にピリピリと信号を感じる。黒犬、お前はどんなやつだって狩ってきた。でもきっと、そいつは手に負えないぞ。黒犬は今にも蛇に飛びかかりそうだった。蛇はぼくたちに興味がなさそうに、いかにも油断しているように、その首を見せつけている。ぼくは足音を立てないよう、黒犬と蛇から目線をはずさないよう、純銀製のピカピカした犬笛を取りに、部屋へともどった。
その他
公開:18/10/23 21:53
更新:18/10/23 23:35
更新:18/10/23 23:35
かにです。あの頃のぼくたちが見た葡萄は酸っぱいにちがいない。
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