家族との闘い

昔は山から下りてくることは滅多になかったが、人間の住む土地が拡大した事もあり、近ごろは「家族」が村を襲うケースが多発している。
群れの中で一番大きな家がメスだ。女王一頭に対し、オスは二十から三十頭程度、そこに小型の小さな家が十数頭加わり「家族」を構成する。
奴らは夜行性で、昼は森の奥に集団で眠っている。夜になると「家族」のオスが中心となり、集団の狩りが始まる⋯⋯。
｢家族の連中が襲ってきやがったッ！」
木製の壁面に火を点けんと、村人たちは松明を片手に応戦するが、あまり効果はない。
相当大きな図体に似合わず犬並みの速度を誇る家たちは、敗走する人間どもを追いつめてゆき、次々とその巨大な顎の犠牲にした。

村を殲滅し終えるとすべてのオスが集まり、各々の収穫を女王の前に捧げた。いちばん上等の獲物を己と子どもたちに、残りをオスたちに分け与えた。
燃えさかる炎の中、家族たちは勝利の雄叫びをあげた──。