セロリ畑からのBig Wave

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 セロリ臭い畑に突っ込み、スタックした。でも「売地」の看板を避けた俺、流石。
 二年前、ダチに聞いた「セロリ畑の先の浜。朝一番の波はすごい」
 間に合うか…
 向こうから巨大なトラクターがセロリの匂いをぷんぷんさせてやってきた。俺は手を振る。老人が、無言でロープを結び、車を引っ張り出してくれた。
 俺の「ありがと…」にかぶせて、老人が言う。
「波乗りか?」
「ええ。いいスポットだと聞いたもんで」
「今朝はやめとけ」
「?」
「数が多い」
 老人はそう言って運転席に戻り、蛇行しながら遠ざかっていった。
 運転下手だな…

 十数分後。俺はボードに跨って、夜明けの水平線を見ていた。
「来た!」
 俺はボードを反転させパドリングする。波が俺を高々と持ち上げる。
 テイクオフ。
 朝日に輝く砂浜。そこは、畑から押し寄せる緑色の何かに埋め尽くされていた。俺の車も…
 この浜にセロリの匂いはしない。
ホラー
公開:18/10/23 11:23

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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