平常心

物音一つしない小さな部屋の中・・・
男性は手足を椅子の枠にワイヤーで蛇の蜷局のように縛れて、椅子の上で拘束していた。
目隠しをしているため、目の前で起きている光景が全くわからなかった。
数十メートル先で、誰かがテーブルの上に置かれている何か工具箱の中を物色している音がきこえた。
「助けてくれないか・・・頼むよ・・・」
男は衰弱しきった声で言った。
犯人は、箱の中から一丁の拳銃を取り出した。
「黙っていろ・・・」
犯人はゆっくりと男に近づき、男の口に拳銃の先端を突っ込んで、怒鳴った。
引き金を引く音が、喉をつたった。
「俺が何をしたんだよ？」
男は犯人に問いを投げかげた。
「おまえは何もしていない、おまえは悪くないから、今こうしているんだろ・・・」
犯人は躊躇わずに、銃を撃った。
平和を尊重しているにもかかわらず、戦争が起きるのと全く同じであった。