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私はテーブルの上に置かれている真っ赤な林檎を描いていた。
林檎は無表情なまま佇んでいた。
無表情でも確かに構わないが、もう少し被写体としての自覚をもって、喜怒哀楽を表現して欲しい…
私は物々と言いながら、繊細な筆で林檎の輪郭を描いていった。
画家生活の半生を、林檎を描くことに捧げたのだから、その恩返しがあってもいいのではないかと思ったが、林檎は相変わらず無愛想を貫いた。
私は呆れ返りながら、癖で鼻面をかいた。
困ったり、悩んだりした時に時折出てしまう無自覚である。
私は長時間かけて、林檎の絵を完成させた。
部屋の奥隅に置かれている棚の横の隙間に挟まれた百枚近い浪費の残骸のギャラリーに目をやった。
「また…あそこに挟まれるのか…なあ。いつになったら、林檎に当たる光に丸みがおびるんだ。これじゃあ、いつまでたっても、確実にはならないではないか…」
私はその絵をもって、ギャラリーの間に挟んだ。
その他
公開:18/10/21 18:01

神代博志( パパゲーノ )

魔笛の主人公はパパゲーノとパパゲーナだと思います!
よろしければ、フォーローお願いいたします。m(_ _)m

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