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昨晩降り積もった雪があたりに雪猫を作っていた。
それは我が町に起こる厄介な現象で、まるで白い本物の猫のように動き出す雪の塊だった。
僕はため息をついた。
「今年もこんな時期か…」

今朝も仕事に向かう途中、人懐こいやつにすり寄られてしまった。
本物の猫とは違い毛だらけにはならないものの、僕のズボンは膝から下がびっしょりだ。
想定内とはいえ、毎度の事に面倒ではある。

よせばいいのに雪猫は人間にくっつく程、体温で溶けてしまうのだ。
彼らは雪なのに暖かい所が好きで、日が高くなると仲良く寄り添って日向ぼっこをする。
そしてじわじわと小さくなり、溶けていく。
そんな美しく儚い雪猫は、メディアでも取り上げられ、人々に愛されている。

でも今の僕には厄介でしかなかった。
今年は僕の傍に愛猫のユキが居ないから。
そして、思い出すたびに目から雪解け水が溢れてくる。
ああ…なんて厄介なんだ。
ファンタジー
公開:18/10/19 17:58

サンタクロースの弟子

サンタクロースの弟子はクリスマス生まれ。
プレゼント作りの合間にのんびり物書きをしています。

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