秋の金平糖
12
12
コツンと音を立て落ちたのは金平糖だった。それまで女の子は自分を小さく無力に感じ、塵のように消えて無くなりたいと思っていた。
女の子の名は瑞季。先日、2年付き合った恋人と別れた。仕事を終えて家に帰ると心がぽっかり寂しくて、虚無の中でどこにも行けないようだった。夜が長かった。
金平糖は女の子がぱちくりしている間に、首をかしげるように体を傾け「食べて」と言った。白く尖った粒は口のなかで食むと甘く弾けた。その甘さはじんわりして、勝手に涙が出てきた。
金平糖はまた現れ、自分は秋を手助けする使者だと名乗った。秋に心が不安定になる人達を助けるのだと。君の場合は特別だよ、と白い粒は言った。それ自身も悲しみを背負っているようだった。
泣きたい時に現れる金平糖。共に過ごすうち、季節はゆっくりと確かに過ぎていった。
冬になり、金平糖は雪に溶け二度と現れなかった。女の子は瑞季に戻った。もう大丈夫だった。
女の子の名は瑞季。先日、2年付き合った恋人と別れた。仕事を終えて家に帰ると心がぽっかり寂しくて、虚無の中でどこにも行けないようだった。夜が長かった。
金平糖は女の子がぱちくりしている間に、首をかしげるように体を傾け「食べて」と言った。白く尖った粒は口のなかで食むと甘く弾けた。その甘さはじんわりして、勝手に涙が出てきた。
金平糖はまた現れ、自分は秋を手助けする使者だと名乗った。秋に心が不安定になる人達を助けるのだと。君の場合は特別だよ、と白い粒は言った。それ自身も悲しみを背負っているようだった。
泣きたい時に現れる金平糖。共に過ごすうち、季節はゆっくりと確かに過ぎていった。
冬になり、金平糖は雪に溶け二度と現れなかった。女の子は瑞季に戻った。もう大丈夫だった。
その他
公開:18/10/19 17:44
特に名前に引っかけはありません
自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。
110.泡顔
ログインするとコメントを投稿できます