ホイッスル

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 主審なんですよ、なぜか。ルールも、選手の言葉も分からないのに。
 怖いから逃げ回って。でもボールも選手も、ものすごい勢いでこっちに向かってきて、もう、泣きそうですよ。時計を見るたびにブーイングだし。
 めったなことじゃ、笛吹けないでしょ。負けたら一次リーグ敗退っていう試合で…
 じゃ、なんで僕が主審なんだよっ!って叫んでも、声援と怒号で届きやしない。
 でも、やっと試合終了。ホイッスルを咥えて、でも待てよ……
 吹き始めてから、思ったんです。これ、吹き終わった途端に、僕は囲まれて殺されるんじゃないかって。だから笛を吹き続けてるんです。
 昔、アナウンサーがゴ~ルって絶叫し続けてた、あんな感じで。
 笛の音が止んだら、絶対に殺されるから。
 息が続かなくなって、目の前がくらくらして意識を失って。
 目覚ましが鳴ってました。
 その日のうちに、目覚ましを買い換えました。鳥の声がするやつにね。
その他
公開:18/10/19 12:03

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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