動物園

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 動物園へ行きたいと母が言うので、わたしは車で動物園のある近くの山へと向かった。
 園内に入ると、迷路のような小道が四方へ続き、その右や左には、四角い無数の檻が不揃いに並んでいる。
 檻の中には人間以外の生き物が、その本性のままに飼育されていて、憮然とした表情を浮かべながら、来客たちを観察していた。
 ああ楽しいねぇかわいいねぇと母は喜んでいる。
 わたしは檻の中に散らばる汚物や食い散らかした諸々の残骸、人間以外のそれら自体が放つ、独特な異臭が苦手で、早く帰りたいと思っていた。
 そんな本心を知るか知らずか、檻の中の観察者たちは、その鋭い眼光をわたしたちへと向け、確かな評価を下して行く。
 母は楽しそうに笑みを浮かべ、檻から檻へと、長く曲がりくねった道をどこまでも進み続けるのだった。
 やがて陽は沈み、園の門は閉ざされ、暗闇の中で檻の群れは静まり返る。
 わたしと母も既にそこにはいない。
その他
公開:18/10/20 03:42
更新:18/10/20 03:44

固形物

まだよく分かりませんので、よろしくお願いいたします。

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