凶花～花瘤～

─新たな感染症が発見される。
花と思われる生物が人体に寄生し、瘤ができる奇病だ。
植物に虫が寄生して発生する虫瘤と同じように、寄生により細胞が傷つき、奇形状態になる。
花の実態はいまだ不明だが、各地で「原因不明の瘤により、幼児や老人が次々に衰弱死」「前例のない奇妙な感染症が流行」という報告がある。
初期状態の瘤は、手術で取り除くことができるが、大量に発生してしまうと手術困難になるため、初期に発見することが重要。
奇妙なことに、花のような生命体は昆虫に似た生態をもつ。幼虫のように幼花(仮称)状態になり人の血肉を餌にして育ち、瘤の中で変態し、成花になって瘤から出てくる。
成花は飛翔し、茎のような管を伸ばして種を産み付ける。成花になる前に処理をすることが重要になる。─

僕はパソコンを閉じ、病室の窓から外を見た。空いっぱいに舞う花がとても綺麗だ。皮膚を突き破り、生まれたばかりの花を、空に放した。