百年の絵

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彼女がそれを始めたのは、十歳のときだった。

周囲は気味悪がり、友達は馬鹿にした。

両親に叱られても、恋人に嫌われても、彼女は決してやめなかった。

やがて結婚し、子どもを産み、孫が生まれ、夫を亡くした。

それでも毎日、少しずつ続けた。

百十歳で、ついに作品が完成した。

描かれていたのは、一本の巨大な木だった。

その木は、すべて彼女自身の爪でできていた。

百年間、爪を切り、木の形に貼り続けたのだ。

世界中の美術評論家がその絵を絶賛した。

しかし、評価されたのは技術ではなかった。

何を言われようと、百年間、自分のやりたいことを貫き通した精神そのものが、芸術になっていたのだ。

作品には百億円の値がついた。

親戚や友人が一気に増えた。

記者が尋ねた。

「どうして百年間も続けられたのですか?」

彼女は当たり前のように答えた。

「だって、毎日爪は伸びるんですもの」
公開:26/11/07 01:58
人生 アート

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