人のいい殺し屋

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男は小太りで、いつもニコニコしていた。
なぜかどの店でも店員に間違われる。

スーパーでは納豆の味を聞かれ、
居酒屋ではビールを注文される。

男は無職だ。

葬儀屋では遺族より泣いてクビ。
家電量販店では他店の安売りを教えてクビ。
居酒屋では同僚を助けすぎてクビ。

ある日、友人が訪ねてきた。

「頼む。俺を殺したことにして逃がしてくれ」

男は断れず、引き受けた。うまくいった。


男は「殺し屋」を開業した。
口コミで大繁盛した。

ある日、老人が訪ねてきた。

「一人、殺してほしい」

「どなたを死んだことにしましょう?」

「いや、本当に殺してほしいんだ」

「申し訳ありません。うちは誰も殺さない殺し屋です」

「それで商売になるのか?」

「死にたい人より、死んだことにしたい人のほうが多いんですよ」

老人は帰り際に尋ねた。

「ところで店員さん、ここの店主はどこにいるのかね?」
その他
公開:26/10/27 16:03

宮東真 琴音

日常に潜む不思議や矛盾をもとに最後に「あっと」思わせるブラックユーモアなどを書いています

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