思い出銀行

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 事故で夫を亡くした私の元に、思い出銀行から案内が届いた。
〈当銀行に、ご主人が思い出を預けておられます。引き出すか、そのまま処分するかは奥様のご希望に従います。ご連絡は下記まで〉

 夫は結婚前、かなりモテたと聞いているし、昔の恋人たちとの思い出が山ほど出て来るに違いない。でも、怖いもの見たさもあり、足を運んだ。
「どうぞこちらへ」
 応接室に案内され、椅子に座ると、部屋が暗くなり、夫が預けていた思い出が私の中に再生される。

 初めて出会った日、声をかけられて頬を染める私。 
 プロポーズの言葉に涙ぐむ私。
 生まれたばかりの由香を抱いて微笑む私。

 預けてあったのはすべて私との思い出だった。涙があふれる。
 でも、私たちの思い出って、こんなに美しかったかしら。喧嘩もしたし、美化され過ぎのような……

 そんな疑念がよぎった時、行員がひと言。
「かなり利息がついております」
ファンタジー
公開:26/10/24 07:12

ナラネコ

老後の楽しみに、短いものを時々書いています。
2026年4月から、noteにも投稿始めました。
https://note.com/naraneko

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