深窓の礼状

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馴染みのコーヒーショップがある。
とにかく家具がいい。
ヨーロッパのアンティーク品、それも、かなり古くて上質な物ばかりだ。
肝心のコーヒーは⋯⋯これは、普通。
まぁ、雰囲気は100点なのだ。
贅沢は言うまい。

店の一番奥の席。
普通のコーヒーを味わいながら、駅まで歩いてゆく人々の姿を窓越しに眺める。
すると、ごくたまに、窓の隙間から、手紙を預かることがある。
大抵が感謝を綴ったもので、なかには、筆跡から後悔の滲み出た「ありがとう」が含まれていたこともあった。
手紙は、コーヒーを飲み終える頃、マスターが回収にやってくる。

「この店では、伝えられなかった気持ちを引き取って、コーヒーに溶かしているんですよ」

もう何十年も、毎日顔を合わせているのに、いつまで経っても、初めて訪れた客のように扱われる。
普通のコーヒーを普通にいただける奇跡を胸に、わたしは壁に掛けられた絵のなかに帰った。
ファンタジー
公開:26/10/09 22:00

いちいおと

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintやAIで作成しています。

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