兎と亀

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森の広場で、兎と亀の千メートル競争が始まった。
勝負にならないよと、観衆の動物達は笑った。合図と同時に、兎は矢の様に飛び出したが、百メートルも走った所で兎は急に立ち止まった。あれ? 目の前の景色が、奇妙に歪んでいる。走っても走っても、同じ大木が現れる。
その横を、亀はゆっくりと通り過ぎた。どうして? 兎は必死に追いかけたが亀との距離は広がっていくばかり。
そして、亀がゴールした瞬間、森中が静まり返った。
実はその日、千メートルのコースには、亀にしか見えない時間の抜け道が開いていた。
亀が一歩進むたび、地上の時間は一秒だけ巻き戻っていた。
更にもっと恐ろしい秘密があった。ゴールした亀が振り返ると、そこには誰もいない。
動物達も森も、兎さえも消えていた。
亀は呟いた。また、百年前に戻ってしまった。そして遠くから、若い兎の声が聞こえた。
よーい、どん! 千メートル競争は、永遠に始まり続けていた。
ファンタジー
公開:26/10/06 16:09

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