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審議会の円卓の中央には、赤と青、二つのボタンがあった。赤を押せば、大勢を救うとされる「千年に一人の天才」が助かる。青を押せば、名もなきー般人十人が助かる。「計算は明白です」とアナリストは告げた。「天才が生む未来の利益は、十人の生涯価値をはるかに上回ります」しかし、議論は紛糾した。「命に優劣をつけるな」「未来の数億人を見捨てるのか」。人権団体も倫理学者も譲らず、世論は二分された。期限が迫り、議長はついに宜言した。「我が国は、人間の尊厳と平等を守る。誰一人、生贄にはしない」委員会は満場一致の拍手に包まれた。誰もが自らの倫理の高さを称え、正しい決断を下したと信じていた。むかえた当日、誰もボタンを押さなかった。タイムリミットのベルが鳴り、二つの部屋に毒ガスが流れ込んだ。天才一人と一般人十人、計十一人の命が消えた。翌朝、新聞は誇らしげに社説を掲げた。『我々は最後まで、誰の命も選別しなかった』
SF
公開:26/10/10 16:09
更新:26/10/10 16:11
更新:26/10/10 16:11
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