小判を捨てよ、海へ出よう

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海びらきの季節。海辺の古着屋のまねき猫であるおれは、小判を持ったまま退屈していた。海に行きたい。衝動をおさえきれない。おれは手元の小判を捨て、店にあったミニチュアのサーフボードにこっそり持ち替えた。

翌朝、店主の野郎が面白がって、おれの写真をネットに上げると、店には観光客が殺到した。身動きが取れず窮屈な思いをしていた。

3日目の夕方、恐ろしい「風紀委員」が現れた。おれとまったく同じ姿をしている、まねき猫だ。小判を持たない違反者を超強力接着剤で店頭に永久固定する組織だ。

おれは驚きのあまり、カタカタと陶器の足音を立てて店を飛び出し、サーフボードを抱えて海へ逃げた。波に乗ればもう安心だ。

だが振り返ると、背後の白波がみるみる猫の耳と髭の形に変わっていく。風紀委員は化け猫となり、大波そのものに化けて追ってきたのだ。おれは今でも、この広い大海原のどこかで、あの風紀委員から逃げ続けている。
公開:26/08/25 20:40

yabori

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