黒いかき氷

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「『黒いかき氷』はいかがですかー」

夏祭り。屋台の店主の声が響いていた。

「黒って、何味?」

男の子が尋ねた。

「食べてみればわかるよ」

店主が黒いかき氷を差し出すと、男の子は一口食べた。

「おいしい!」

隣にいた父親も黒いかき氷を買って食べた。

「甘いですね。それに、どこか懐かしい」

「……痛っ」

父親は頭を押さえた。

「お父さん、どうしたの?」

「いや……なんでもない」

父親の顔は赤くなっていた。
やがて、周囲の大人たちも次々と頭を押さえ始めた。
その横で、子供たちは平然と食べている。

「この黒いシロップは、何なんですか?」

「黒歴史シロップです」

「黒歴史?」

「ええ。痛い記憶を、甘いシロップにしているんですよ」

「なるほど。でも、なんで子供たちは平気なんですか?」

店主は子供たちを見つめた。

「この子たちには『まだ』、黒歴史はありませんから」
その他
公開:26/08/19 14:08

加賀美 秋彦

加賀美 秋彦と申します。
2025年4月から、ショートショートを書き始めました。
色々なジャンルの作品を書いています。
よろしくお願いします。

作品イラストはフリー素材やAIで作成したものです。

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