花どろぼう

0
1

 「どろぼう、歓迎します」

 店の前に張られたポスターに思わず私は目を疑った。
いったいどんな大馬鹿者が経営する店なんだ。こうも書かれるともはや素通りする方が難しい。私は気づけばドアを開けていた。
 店には綺麗な花がたくさん並べられていて、その奥には店主らしき男性がいる。丁寧に管理された花は露をたくわえて照明の明かりを反射している。
 こんないい花を盗んでくださいだなんてあの奥にいるやつには一発言ってやらないと。
「いったいあのポスターはなんなんですか」
少し語気の荒げた私の声に振り向いて初めて見えるたれ眉の優しい顔をしたその人は冷静に
 「ああ店前のポスターですか。私は想像するのが好きなんですよ、花泥棒の恋路を。」と言う。予想外の返答に私は思わず笑ってしまう。
 そして同時に、この店から花を盗んで好きな人のもとへ駆ける少年の姿を、私も想像してしまっていた。
恋愛
公開:26/08/15 17:54
更新:26/08/15 20:25

消魚

ぜひ仲良くしてやってください

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容