笑顔の国

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「なぜあんな党に投票したの?」
声を潜める麻衣に、私はうなだれて言った。
「だって、笑顔が素敵だったから……」
圧倒的多数の得票を得た〝笑顔の党〟は、すぐさま憲法を改定して笑顔を禁止した。
「笑顔を守るって、公約に書いてたはずなのに」
私の言葉に、麻衣は首を横に振った。
「違うよ。〝現在は笑顔を守っている〟って書いてただけ。これからも守るなんてどこにも書いてない」
「そんなぁ」
そのとき、入り口から懐中電灯が向けられた。
「おい、そこで何してる。まさか笑ってなどいないだろうな」
憲兵に問い詰められ、私たちは必死で弁解した。
ようやく解放されたときには、すっかり夜が明けていた。

こうして国じゅうから笑顔が消えた。
互いに監視して、怪しい者はすぐに通報された。
疑心暗鬼になって、麻衣とも疎遠になった。

でも、困ったのは最初だけだった。
楽しいことがなくなれば、笑う必要などないのだから。
ホラー
公開:26/08/12 00:35
更新:26/08/12 00:42

UBEBE

さすらいのショートショートガーデニスト。第22回坊っちゃん文学賞佳作

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