ブラックホーム

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吸い込まれるように、その家に惹きつけられた。
中古だが新築のように美しく、洗練された家具付き。私は即決でローンを組んだ。
だが、それは大きな過ちだった。

「おい、サッシに埃が残っているぞ」
「まだ寝るな。床掃除が先だ」
「もっと体を鍛えろ。腕立て百回やるまで、風呂もトイレも水は出さない」

家が、毎日命令してくるのだ。
「昨日もやりました!」と反論すれば、容赦ない報復が待っている。
真夏にエアコンが止まり、電子レンジが火花を散らす。
昨夜などは、浴槽に百度の熱湯が煮え繰りかえっていた。

「もう嫌だ、こんな家出ていく!」
泣きながら玄関へ走ると、スマートロックが冷酷な音を立てて施錠された。
「おい、残りのローンはどうする? あと三十五年残ってるぞ」

あー、もっと慎重に決めれば良かった。
俺は今日二度目の雑巾がけを始めた。
ホラー
公開:26/04/22 20:16

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