黒雲に遠雷

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 夜通し歩いた魔法使いはすっかり疲れ果て、朝靄の中で焚き木を燃して、一息つくことにしました。
 まだお天道さまも見つからない明け方。四方は白く、絹の帳に包まれたよう。
 夢心地に、魔法使いがつい居眠りをしたのも、仕方がないでしょう。
 けれど、うっかり火の用心。
 焚き火は爆ぜて、靄を少しずつ焦がし始めてしまいました。
 焦がし靄は連なって天へと昇り、真っ黒な雲となって、白雲の影のように東の空へと流れて行きます。
 空に住んでる絵描き家は、黒雲を見てびっくり仰天。
 七色の虹樽にぶつかって、ごろりごろりと転がった音は、遠雷の轟きとなって魔法使いの耳に届きました。
 はっと目覚めて火を消して、その朝は穏やかに明けましたが…。
 今でも度々魔法使いは、靄の中、焚き火の前で、うとうとすることがあるとか、ないとか。
ファンタジー
公開:26/04/25 00:00

鹿野 秋乃

毒にも薬にもならないお話ばかりです。

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