キジも鳴かずば。

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シャッター街の小さな和菓子屋。
夫は薄ら笑いを浮かべ、帰ってきた。
「今、申し込んできた」
「は? 何を」
「市議会選挙」
妻は呆れ顔で手を止めた。
「あんたが当選なんて、しないさ」
「バカだなぁ。店の宣伝のためだ」
夫は自慢げに話し始めた。
「テレビだよ。それとなく団子が映ればいい」
「あんた、いろんなことバレるぞ。売り上げをごまかしてるとか」
「えっ?」
「ネットで晒されて終わりだ」
「なぁ、俺、どうしたらいい?」
「目立たないよう、投票日まで何もするな」
SNSがざわつきだした。
ポスターも貼らず、演説もしない。
「すみません。取材、よろしいですか?」
「困ります」
その映像は、繰り返し流れた。
——投票日。
店の前にはカメラ。
緊張した夫婦が、画面いっぱいに映る。
「あぁ……あと一歩でした」
モニターを見て、落選を確認する。
——万歳、万歳。
二人は肩を叩き合い、歓喜した。
おわり
その他
公開:26/04/19 00:31
寓話 ブラック 風刺 ズレ

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