臨終医
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私は臨終医、仕事は単純だ。
静かな部屋に入り、相手を見て、時刻を告げる。
「御臨終です」
家族が泣きながら遺体にすがる。
そこに、家族に寄り添う気持ちなど必要ない。それで、終わり。
だからこそ、この一言は完璧でなくてはならない。
私は週に一度、ボイストレーナーに通っている。
発声練習の合間、鏡の前で無表情を確認する。
一度だけペンライトを忘れた。
私はとっさに胸元の万年筆を取り出した。
そして、目の上で上下左右に振った。
近くにいた看護師も気づかなかっただろう。
最近、ドラマの影響か臨終医志望の学生が増えたらしい。
彼らは「御臨終です」の後に何か一言つけたがる。
私は何も言わない。それが美学だ。
ある日、私は突然めまいがして倒れた。
目を開けると、ベッドの横で、若い臨終医が立っている。
「御臨終です。ご主人様は安らかな表情をされています」
私は思った。
まだ若いな。だが、悪くない。
おわり
静かな部屋に入り、相手を見て、時刻を告げる。
「御臨終です」
家族が泣きながら遺体にすがる。
そこに、家族に寄り添う気持ちなど必要ない。それで、終わり。
だからこそ、この一言は完璧でなくてはならない。
私は週に一度、ボイストレーナーに通っている。
発声練習の合間、鏡の前で無表情を確認する。
一度だけペンライトを忘れた。
私はとっさに胸元の万年筆を取り出した。
そして、目の上で上下左右に振った。
近くにいた看護師も気づかなかっただろう。
最近、ドラマの影響か臨終医志望の学生が増えたらしい。
彼らは「御臨終です」の後に何か一言つけたがる。
私は何も言わない。それが美学だ。
ある日、私は突然めまいがして倒れた。
目を開けると、ベッドの横で、若い臨終医が立っている。
「御臨終です。ご主人様は安らかな表情をされています」
私は思った。
まだ若いな。だが、悪くない。
おわり
その他
公開:26/04/18 19:25
更新:26/04/18 19:35
更新:26/04/18 19:35
寓話
ズレ
ブラック
風刺
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