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彼の腕時計は常に進んでいる。時間にルーズな彼は、時計を進ませることによって遅刻を防ごうとしていたが、5分、10分、20分と進んだ時刻に慣れ、また進ませるということを繰り返しているうちに、彼の時計は時間管理の道具として用をなさないものになった。
「もう10時20分だぞ。20分遅刻だ!」
待ち合わせ場所で怒る友人に彼は言った。
「違う。俺はむしろ早く来たんだ」
彼は12時50分を指す腕時計を友人に見せた。
「俺はこの時計が3時間進んでいると思っていたんだ」
「……」
「しかし今確認したら、実際は2時間半しか進んでいなかった」
「つまり、簡単に言えば、お前の勘違いで20分遅刻したってことだろ」
「違う。俺は3時間進んだ未来への到着を10分前に実現した。悪いのは、俺の期待に応えられなかった、この進み足りない時計だ」
「……(何言ってんだこいつ?)」
彼の遅刻癖は、治る気配がなかった。
「もう10時20分だぞ。20分遅刻だ!」
待ち合わせ場所で怒る友人に彼は言った。
「違う。俺はむしろ早く来たんだ」
彼は12時50分を指す腕時計を友人に見せた。
「俺はこの時計が3時間進んでいると思っていたんだ」
「……」
「しかし今確認したら、実際は2時間半しか進んでいなかった」
「つまり、簡単に言えば、お前の勘違いで20分遅刻したってことだろ」
「違う。俺は3時間進んだ未来への到着を10分前に実現した。悪いのは、俺の期待に応えられなかった、この進み足りない時計だ」
「……(何言ってんだこいつ?)」
彼の遅刻癖は、治る気配がなかった。
その他
公開:26/04/18 07:02
老後の楽しみに、短いものを時々書いています。
2026年4月から、noteにも投稿始めました。
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ナラネコ