0
1
王都では昔、
徹夜続きの書記たちに
《奮い立ちの丸薬》が
配られていた。
飲む前には、
役所の壁に貼られた標語を
声に出して唱える決まりだった。
タカシは毎晩、
乾いた喉でそれを読み上げ、
夜明けまで帳面をつけていた。
セウゴは薬包の裏を指で押し、
「効いてるのが文句なのか薬なのか、もうわからない」
と言った。
ワイゴは薄く笑った。
「人は効き目より先に、
それを飲む理由のほうを信じるからね」
ある年、
壁の標語だけが外された。
薬包の刷りも改められた。
今、夜番台に残るのは、
飾り気のない黒い小瓶だけだ。
棚の効能札には、
眠気、目のかすみ、指の震え。
それだけが記されていた。
――鼓舞文言は旧式につき削除。
疲労時は実用瓶を用いること。
夜更けの詰所で、
それを唱える者は、
もう誰もいなかった。
黒瓶の脇には、
伏せた帳面が一冊増えていた。
唱和欄は空白のままだった。
徹夜続きの書記たちに
《奮い立ちの丸薬》が
配られていた。
飲む前には、
役所の壁に貼られた標語を
声に出して唱える決まりだった。
タカシは毎晩、
乾いた喉でそれを読み上げ、
夜明けまで帳面をつけていた。
セウゴは薬包の裏を指で押し、
「効いてるのが文句なのか薬なのか、もうわからない」
と言った。
ワイゴは薄く笑った。
「人は効き目より先に、
それを飲む理由のほうを信じるからね」
ある年、
壁の標語だけが外された。
薬包の刷りも改められた。
今、夜番台に残るのは、
飾り気のない黒い小瓶だけだ。
棚の効能札には、
眠気、目のかすみ、指の震え。
それだけが記されていた。
――鼓舞文言は旧式につき削除。
疲労時は実用瓶を用いること。
夜更けの詰所で、
それを唱える者は、
もう誰もいなかった。
黒瓶の脇には、
伏せた帳面が一冊増えていた。
唱和欄は空白のままだった。
ファンタジー
公開:26/04/20 21:00
更新:26/04/17 18:41
更新:26/04/17 18:41
コメントはありません
ログインするとコメントを投稿できます
問い屋