小さな瓶
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老いた男は、原稿を鞄に入れた。
そして、最後の一枚を書くためにホテルへ向かう。
「あなたって人は……」
玄関で見送る妻の目は、涙で潤んでいた。
今まで、たくさんの論文を書いた。
学生を前に、熱く語った日もあった。
そう、『生きるとは何か』。
「この論文が最後。私の集大成。生きた証」
ホテルの机に、原稿用紙と万年筆、小さな瓶を置いた。
男は椅子に座り、筆を走らせる。
最後の一行。
『生きることとは……』
静かに筆を置く。
窓の夜景を見ながら、錠剤を取り出した。
妻の顔が浮かぶ。
「今まで、苦労をかけた」
男は小さくうなずくと、手のひらの錠剤を口に運んだ。
そして、寝室の扉を開けた。
――カチャ。
「お客さん、早くしないと時間終わるわよ。
それとも、延長する?」
おわり
そして、最後の一枚を書くためにホテルへ向かう。
「あなたって人は……」
玄関で見送る妻の目は、涙で潤んでいた。
今まで、たくさんの論文を書いた。
学生を前に、熱く語った日もあった。
そう、『生きるとは何か』。
「この論文が最後。私の集大成。生きた証」
ホテルの机に、原稿用紙と万年筆、小さな瓶を置いた。
男は椅子に座り、筆を走らせる。
最後の一行。
『生きることとは……』
静かに筆を置く。
窓の夜景を見ながら、錠剤を取り出した。
妻の顔が浮かぶ。
「今まで、苦労をかけた」
男は小さくうなずくと、手のひらの錠剤を口に運んだ。
そして、寝室の扉を開けた。
――カチャ。
「お客さん、早くしないと時間終わるわよ。
それとも、延長する?」
おわり
その他
公開:26/04/20 15:42
寓話
ブラック
ズレ
風刺
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