名画でショート102『サン=トロペの港』(ポール・シニャック)

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その男の目は、全てが点の集まりにしか見えなかった。
人物であれば、その人物の色の点の塊。
建物であれば、壁の色、窓の色、屋根の色、それぞれの点が集まる。
船も同じだ。全てが色を持った点の集まり。
その男は、港の風景を見るのが好きだった。
静かな海は、様々な色を取り込む。太陽の光、船の色、港に建ち並ぶ建物の色。さらにはさざ波が持つ角度や時間の経過と移り変わる太陽の位置によって、海の色は絶えず変化を続ける。
カエルやカマキリは、動く物体しか見えないという。
その男の目は、ある意味ではカエルやカマキリに近かった。色彩が動く物体だけ正確に把握することができる。
日常生活には不便だが、その男は不思議な目を持ったことに、喜びを感じていた。世界の美しさを、自然が織りなす色彩の魔法を、その男は感じ続けていた。
その男は幸せだった。
その他
公開:26/04/11 12:01

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