猫の代金

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むかしむかし、
金の値打ちが
よくわからぬ若者がおりました。

米は腹に入れば同じ、
着物は破れねば同じ。
村では
「つまらぬ男だ」
と言われておりました。

若者の家には、
鼠もろくに捕らぬ
痩せ猫がおりました。
村の者は
「いてもおらずも同じだ」
と笑っておりました。

そこへ黒い羽織の商人が現れ、
猫を見て
小判を一枚置きました。

「猫に小判。
ようできた言葉でございます」

若者は首をかしげましたが、
商人は猫を抱き、
「好きに使えばよろしい」
とだけ申しました。

若者はその小判で、
雨よけの板を買い、
鍋の欠けを直し、
冬前に草履まで
新しくしました。

春になると、
若者の家の板だけ反らず、
鍋の口も
欠けぬままでした。

けれど村では、
家のことより先に
「あの若者は
猫を売った」
とだけ言われました。

その春、
鼠だけは
前よりよく走るようになりました。
ファンタジー
公開:26/04/18 12:00
更新:26/04/11 05:26

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

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