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むかしむかし、
人を疑わぬ若者がおりました。
旅の者に道を譲り、
荷を少し持ち、
茶を分けるたび、
村では
「渡る世間に鬼はない」
と言われておりました。
そこへ黒い羽織の男が現れ、
若者の戸口を見て申しました。
「ようできた言葉でございます。
鬼はおらずとも、
空手では帰らぬものです」
若者はその言葉を胸に入れ、
頼まれごとを断らず、
貸したものに名も付けなくなりました。
蓑、鍬、戸口の桶。
借りた者はみな礼を言い、
返す日の話だけ
きれいに置いて帰りました。
冬の朝、
若者が戸を開けると、
敷居だけが妙に磨り減っておりました。
人の出入りは絶えなかったのに、
もう自分の家へ入る音だけが
ひどくよそよそしく聞こえました。
人を疑わぬ若者がおりました。
旅の者に道を譲り、
荷を少し持ち、
茶を分けるたび、
村では
「渡る世間に鬼はない」
と言われておりました。
そこへ黒い羽織の男が現れ、
若者の戸口を見て申しました。
「ようできた言葉でございます。
鬼はおらずとも、
空手では帰らぬものです」
若者はその言葉を胸に入れ、
頼まれごとを断らず、
貸したものに名も付けなくなりました。
蓑、鍬、戸口の桶。
借りた者はみな礼を言い、
返す日の話だけ
きれいに置いて帰りました。
冬の朝、
若者が戸を開けると、
敷居だけが妙に磨り減っておりました。
人の出入りは絶えなかったのに、
もう自分の家へ入る音だけが
ひどくよそよそしく聞こえました。
ファンタジー
公開:26/04/17 12:00
更新:26/04/11 04:43
更新:26/04/11 04:43
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