追跡痕

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祈りにすがって、訪れ人は瘴気の村を抜けた。
境を越えた朝、土は土の匂いをしていた。
宿を借り、灯を消して眠った。

夜半、村でつかまれた手首だけが、
氷水に浸したように冷えていた。

目を覚ますと、枕元の祈祷札が濡れ、
墨が一行ずれていた。
――役務、未了。

戸を開けても、廊下に人影はない。
ただ、板の継ぎ目に沿って、
泥でもない黒い筋が、敷居を越えてのびていた。

朝、宿の者は首をかしげた。
「昨夜、どなたかお連れでしたか」

札の裏には、追記だけが増えていた。
――祈祷による所在秘匿は、一夜限りとする。
ホラー
公開:26/04/16 22:00
更新:26/04/15 08:30

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

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